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資本主義って何、何が問題なのか

資本主義が問題の根元という話が出まわています。このYou Tubeは、ちょっとどうかなと思う部分もありますが、大変分かりやすいのでご紹介。ちょっと長いですけど(^^;)

ご興味あれば。「なぜ日本人の給料が上がらないのか」という端的な疑問への答えの一部が見えるかもしれません。

「資本論」というと共産主義の教科書とイメージする人が多いと思いますが、途中では資本主義を詳細に分析し、その問題を指摘した重厚な著書です。

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・資本主義の本質は何か。まず答えから。それは「資本を増やす」こと、それだけです。問題はそれだけが唯一の目的ということで、それ以外は本質ではありません。「世の中を良くする」とか「人々のニーズを満たす」とかいうのは単なる「方便」です。資本主義は絶えず拡大と成長を求める運動になります。その成長は現在ではGDPという指標では測られます。資本主義社会にいる限りはこれが「絶対」で、決定的に重要です。

・そして資本を増やすことに上限はない。それは無限に増やす活動です。人々のニーズや社会の満足などはショーストッパーにはなりません。お腹が一杯になってもひたすら食べ続け、身体に脂肪を貯めこんでいくようなものです。その行きつく先はどこでしょうか。

・途上国・新興国ではまだまだ資本が必要かも知れませんが、問題を起こしているのは先進国、そしてその中の資本家(=超富裕層)です。彼らが人間の「必要」を越えて、人々には借金をさせて(通貨の原資は政府の借金です)、飽くなき成長を目指し、自分たちは蓄財している。これが地球規模の被害を引き起こすと。マルクスもそんな予言をしていました。では成長が止まったらどうなるでしょうか。途端に景気は後退し、積み上がった借金は返せなくなり、人々は生活を失うことになるでしょう。その先にマルクスは革命を予定してましたが、それが必然というのはちょっと無理があるようにも思います。

・資本論は商品から話が始まります。資本論では富は商品の集合体と見なされています。商品は生きるのに必要なものというよりも、売って金儲けするものという意味合いです。前者が持つ価値を「使用価値」、後者が持つ価値を「(交換)価値」と呼びます。

問題は生産は人々が空腹を満たすのに必要な「使用価値」レベルにとどまらず、資本家の資本の飽くなき蓄積の為に、それ以上のレベルにまで達してしまうことです。それを「捌く」為に広告で需要喚起したり、あえて希少性を創造したりしています。とはいえ、一概にメーカーが悪いとは言えないでしょう。彼らも軛に囚われています。

・資本主義の始まりはイギリスで突如始まった「囲い込み運動」です。世界史でもサラッと出てきました。それ以前はコモンズ(共有地。日本で言う入会地)で無料で燃料の枝を拾ったり、牛に草を食ましたり、水汲み場で水を手に入れることが出来ました。コモンズでは「富」が豊富にあった。しかし「囲い込み」が始まって、コモンズが貴族・領主に独占され、落ちている枝ですら「商品」となってしまった。お金がある人ならいざ知らず、お金に乏しい人は途端に入手しづらくなりました。これを「希少化」と言います。この希少化は自然現象ではなく人工的に作り出された希少化。つまり、資本主義は人工的に希少性を作り出すことで、利益を上げようとするシステムとも言えます。

囲い込みで追い出された人は、必要となったお金を入手するためには、自分の労働力を売ることしかできず、「資本家が囲い込んだ資本から商品を作る労働」に従事するほかなかった。要は、貴族・領主は非合法とも言える囲い込みで農地(目的は農地より儲かる放牧地にすること)と労働力を一気に手に入れることができたという訳です。マルクスはこれを「本源的蓄積」と呼んでいます。人間が自然から切り離されて貧しくなっていったということです。

労働の目的も変わりました。以前は生活の為の欲求を満たすための労働だったものが、利益を蓄積(=資本の無限なる増加)の為の労働に変質しました。

・例えば公的事業の民営化は現代版囲い込みとも見えるでしょう。最低限の衣食住、水、医療・健康・エネルギー・教育・公園・図書館。これら人間が生きていく上で必要な富にはお金を持っている人しかアクセスできなくなる。そして、お金を稼ぐためには唯一のネタである労働力を何とかして売らなければならない。生産手段を奪われた労働者は、そんな状況にどんどん追い込まれているようにも見えます。

・問題は分配にもあります。分配に関してトリクルダウン理論というのがあります。「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」という意味で、言い方は刺激的ですが、わかりやすく言うと労働者は資本家の蓄財の「おこぼれ」にあずかって生きているということです。

・では資本主義が全て悪だったかというとそうではないでしょう。女性は苦役から解放され、生活は便利になり。寿命も延びました。私が子供の時代は、私の周囲でもまだまだ貧乏でしたが、いまではおかげで生活が格段に向上したと感じられることでしょう。これのおかげで資本主義に感謝の気持ちがあるとは思います。しかしこれは「おこぼれ」です。労働者の感謝の裏で資本家は膨大な蓄財を行っているようです。まだ開発ネタがある限り、それなりの「おこぼれ」を享受できるでしょうが、ネタがなくなっても資本家は成長を止めないので、資本家は自身の取り分を確保するため「おこぼれ」は減らされ、更に搾取は資源だけにとどまらず、その対象を労働にまで拡大させていきます。資源で引き起こす問題は主に環境問題ですが、労働では移民・治安・格差などに及んできます。これらは最近注目されている問題ですが、資本主義の断末魔とも見えます。