ウクライナ・ロシア戦争の原点
歴史というのはどこから話を始めるかで善悪が逆転します。
例えば東京裁判。あれは「満州事変」以降しか対象になりませんでしたが、理由は簡単で、それ以前を対象に含めると、裁く側(連合国側)に都合が悪いからです。日本軍が東南アジアで戦った相手はアジア人ではありません。なぜか英仏蘭の欧州諸国です。「おまえらそこで何しとってん?」と問われたら都合が悪いからですね。
真珠湾攻撃も最近はアメリカ側の挑発に乗った日本という構図が、日本でもアメリカでも人口に膾炙し始めたように思います。「ルーズベルトは知っていたがハワイには教えなかった」という訳です。誤算は日本軍の破壊能力が想定を遥かに超えてしまっており被害も想定以上になり「知らんふりをしていた」とは言えなくなってしまったことでしょう。
ウクライナ・ロシア戦争でもこういう事柄があてはまります。以下はユニセフのサイトでも何故か現存している2018年12月19日記事ですが、東ウクライナでの過酷な生活が語られています。以下、引用します。
「教室の窓にあいた砲弾の穴、スクールバスでの危険な通学、地下の防空壕、校庭に埋まる不発弾。ウクライナ東部で、これらは今や日常の光景です。4年間の紛争を経て、40万人以上の子どもが前線で暮らし、学校に通い続けています。絶え間ない砲撃の音で眠れぬ夜、校舎や通学バスが砲撃される危険性があることへのストレス。戦闘がもたらした心への代償は、計り知れません。ウクライナの子どもたちのことを知ってください。学校に通おうとしている、ほかの子どもと何ら変わりのない子どもたちです。でも、彼らが暮らしている環境は、「普通」とはかけ離れています。」
ここで問題なのは、彼らは自国の軍事組織から攻撃を受けていると言うことです。彼らの多くはロシア語を話すロシア系又は親ロシア系住民です。この地域では以前からこういう状態が続いていて、実は2014年にミンスク合意がなされ一旦停止したのですが、この記事の2018年に至ってもまだこんな状態が続いていたわけです。そして昨年までも。
ミンスク合意は東ウクライナでの停戦と今後の地位についての取決めで、以下の12項目。
①双方即時停戦を保証。
②OSCE(欧州安全保障協力機構)による停戦の確認と監視の保証。
③ウクライナ法「自治についての臨時令」の導入に伴う地方分権。
④ウクライナとロシアの国境地帯のセキュリティゾーンを設置
⑤全ての捕虜及び違法に拘留されている人物の解放。
⑥ドネツク州及びルガンスク州の一部地域で発生した事件に関連する人物の刑事訴追停止。
⑦包括的な対話の継続。
⑧ドンバスにおける人道状況を改善。
⑨ウクライナ法「自治についての臨時令」に基づく選挙の早期実施。
⑩違法な武装集団及び軍事装備、並びに兵士及び傭兵をウクライナの領域からの撤退。
⑪ドンバス地域に経済回復と復興のプログラムを適用すること。
⑫協議参加者への安全の提供。
これはウクライナの内戦と言えばそうですが、ロシア系住民が国の軍事組織から迫害を受け助けを求めているのをロシアとしてもこれ以上は沈黙できないということ。また、これを煽っているのはアメリカのネオコンと呼ばれている戦争屋とそれに牛耳られているNATOや欧州各国であり、目的はロシアへの挑発と見えている。
ロシアはそんなこと見抜いている為、かつての日本軍のように挑発には簡単にはのらず、「特別軍事作戦」と控えめな表現で、占領したけりゃ簡単に取れるキエフを包囲するだけにとどめ、ウクライナ占領の意図がないことを示し、背後にいるネオコン(ナチとも表現されていますが)の追放と東ウクライナの自治の確保という目標を明示しています。本来は早い段階でウクライナ・ロシア間で停戦の話し合いをし始めたいたのですが、ジョンソン英首相が慌てて飛んできて、停戦交渉をぶち壊したとか。狙いは3つ。①ロシアを弱体化させたい、②武器販売で(横流しを含めて)儲けたい、③欧米各国の支援のサヤ抜きをもっとしたいのだとか。
現アメリカ政府の軛に囚われている日本のMSMは「ロシア悪」説を終始流布していますが、ロシアが一方的に悪いとは言い切れないことは、これだけでも簡単にわかります。もちろんウクライナにも言い分はあるでしょう。ミンスク合意以前の両国関係はソ連時代まで含めればもっと複雑になるかも知れません。
冒頭に書いたように、善悪には決着は付かないので、いずれにしても重要なのは停戦です。儲かる人以外は戦争なんかしたくないのですから。
◇ウクライナ東部で育つということ(Unicef)
https://www.unicef.or.jp/news/2018/0212.html